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介護現場で実践する感染症予防法

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介護現場で実践する感染症予防法

介護現場で実践する感染症予防法

2025/10/31

介護現場では、高齢者や免疫力が低い利用者が多く暮らしているため、感染症予防は極めて重要です。施設内では、病原体が持ち込まれた際に急速に拡大し、利用者の健康被害だけでなく、介護サービスそのものの停滞や職員の負荷増加にもつながる恐れがあります。例えば、厚生労働省の「高齢者介護施設における感染対策マニュアル」でも、施設外から病原体を持ち込まない・持ち出さない・拡げないという三つのポイントが示されています。
本稿では、介護現場で実践できる効果的な感染症予防法を、手洗い・マスク・環境衛生・消毒・情報共有という観点から、科学的根拠に基づいて解説します。さらに、施設における行動基準づくりやスタッフ体制の整え方など、現場で役立つ実践的ノウハウもご紹介します。

目次

    1.手洗い・手指衛生

    まず、最も基本かつ重要なのが「手洗いおよび手指衛生(消毒を含む)」です。手には、指の間・爪の周囲・手首といった、汚れやウイルス・細菌が残りやすい部位があります。例えば、米国Centers for Disease Control and Prevention(CDC)では「きれいな流水および石けんを用い、少なくとも20秒間こすり洗いする」と明記されています。
    また、別の資料では、流水15秒だけでもウイルス量を100分の1程度に減らせるが、石けんで10秒もみ洗い+流水15秒すすぐと10 000分の1になるという実験データがあります。 
    このことから、正しい手洗いは「時間をかけて」「丁寧に」行うことが効果を左右します。具体的には、以下のような手順が推奨されます。

    • 石けんを手に取り、十分に泡立てる。
    • 手のひら・手の甲・指の間・爪の周り・手首まで含めてこすり洗い。
    • 少なくとも20秒以上(状況により30秒程度)こすり洗う。※15秒でも一定の効果あり。
    • 流水で十分にすすぎ、清潔なタオルまたはペーパータオルで水分を拭き取る。
    • 目に見える汚れがある場合や嘔吐物・排泄を処理した後には、流水+石けんによる手洗いを優先し、その後にアルコール手指消毒剤を用いるという順序が望ましい。

    さらに、施設においては「入所者に触れる前」「触れた後」「手袋を外した後」など、手指衛生を必ず実施すべきタイミングがあります。例えば名古屋市の福祉施設情報でも「利用者に触れる前・触れた後が特に重要」と明記されています。
    このように、単に「手を洗う」「消毒する」だけでなく、「いつ」「どのように」「どれだけ丁寧に」を意識して実行することが、感染症予防の基盤です。

    2.マスクおよび飛沫・接触対策

    次に、飛沫感染や接触感染を防ぐための対策です。施設では、利用者が咳やくしゃみをしたり、複数人で会話する機会が多く、飛沫による病原体の拡散が懸念されます。例えば、厚生労働省「高齢者介護施設における感染対策マニュアル」では、飛沫感染予防策として「職員はケア時にマスクを着用」「呼吸器症状のある入所者にはマスク着用を促す」などが挙げられています。
    マスクを正しく着用するためのポイントも併せて確認しておきましょう。

    • 鼻・口をしっかり覆うよう、隙間なく装着する。
    • マスクが湿ったり汚れたりしたら、速やかに交換する。
    • 利用者との接触時や、人が密集している空間ではマスク着用を徹底する。
    • 飛沫を直接浴びた可能性がある場合には、マスク+フェイスシールドやゴーグルなどの追加防護具(PPE:個人防護具)も検討すべきです。 

    マスクだけで感染を完全に防げるわけではありませんが、手洗いや消毒、換気等と組み合わせることで、飛沫・接触による感染経路を有効に遮断できます。

    3.環境衛生・消毒・換気

    介護施設のように多数の人が共同で生活し、共有設備・接触面が多い環境では、環境衛生管理が極めて重要です。具体的に次のような対策が挙げられます。

    (1) 接触頻度の高い表面の清拭・消毒
    手すり、ドアノブ、エレベーターボタン、使用済みの器具、便器・洗面台など、複数回触れられる箇所には、定期的に清掃・消毒を行います。例えば、薬剤耐性菌対策ガイドでも「掃除用具を十分乾燥させる」「共用物品の消毒・洗浄を確実に行う」ことがチェックリストに含まれています。 
    (2) 適切な消毒剤の選定と使用方法

    • 手指消毒には、エタノール濃度70%以上(または60%代でも状況により可)を用いることが厚生労働省から推奨されています。
    • 環境表面の消毒には、例えば次亜塩素酸ナトリウム(塩素系消毒剤)が有効であり、特に嘔吐物・排泄物・汚染液が飛散した箇所では塩素系消毒剤の使用が有効です。

    ただし、その使用濃度・接触時間・使用時の安全面(換気・手袋・保護眼鏡)などを守ることが不可欠であり、安易な使用は逆に事故や効果低下を招く恐れがあります。

    (3) 換気・空気環境
    空気感染の可能性がある病原体(例:結核菌、水痘ウイルス等)を考慮すると、施設内の換気体制が不十分だと感染拡大リスクが高くなります。厚生労働省の手引きでも「施設外から持ち込まれた病原体が施設内で拡大しないように、感染源・経路・宿主の三要因に対して対策を講じる必要がある」としています。 
    具体的には、定期的に窓を開けて換気を行う、空気の流れを確保する、機械換気を備えている施設ではフィルター・風量点検を実施するなどが考えられます。名古屋市の施設情報でも「2方向の窓開けなど空気の流れを作る」ことが明記されています。

    4.スタッフ間の情報共有・体制整備

    感染症対策は、個々の対策がバラバラではなく、組織として整備・運用してこそ効果を持ちます。以下のような体制・ルール整備が重要です。

    • 感染管理体制の整備:施設内で「感染対策責任者」を定め、定期的に対策会議を実施し、感染発生時には迅速かつ組織的に対応できる体制を整えること。厚生労働省の手引きでも「施設・事業所における感染管理の体制づくり」が第Ⅰ章の項目として示されています。
    • 職員の健康管理:職員自身が発熱・咳・倦怠感などの症状を感じた場合には、遠慮せず休息・検査できる環境づくりが必要です。感染源は施設外から持ち込まれるケースが多いという指摘もあり、職員の体調管理が施設全体の安全に直結します。
    • 情報の記録・共有:利用者の体調変化、職員・来訪者の健康状態、環境清掃・消毒状況などを記録し、全スタッフで共有することで「異変を見逃さない」仕組みを作ります。例として、薬剤耐性菌対策ガイドには「手洗いなど基本的な感染対策について、全職員に教育を行う」「利用者・来訪者にも説明/教育を行う」とチェックリストにあります。 
    • ルールの明文化と周知徹底:手洗いやマスクの着用、消毒・換気など、施設の「共通ルール」としてマニュアル化し、新任職員研修・定期研修・日常ミーティングで周知し、スタッフが当たり前に実施できる環境を整えることが重要です。

    5.宿主抵抗力の向上・ワクチン接種

    介護施設の利用者は、生理的に免疫力が低下していたり、複数の持病を抱えていたりすることが多く、感染した際の重症化リスクが高いという点も見逃せません。厚生労働省のマニュアルでは、宿主抵抗力向上の観点から「十分な栄養・睡眠」「ワクチン接種」が重要であると記載されています。
    具体的には、インフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチンの接種促進、また施設職員のワクチン接種状況の把握・促進も含まれます。職員がワクチンを接種することで、施設内での感染源を抑制する一助となります。

    感染症対策法まとめ

    介護現場の感染症対策は、基本の積み重ねが何よりの防御になります。
    手洗いやマスクの着用、環境の清掃・消毒といった日常的な行動を、全職員が同じ基準で実践することが重要です。
    また、職員同士が体調や感染状況を共有し、異変にすぐ対応できる体制を整えることで、感染の拡大を未然に防ぐことができます。

    さらに、利用者や職員の健康維持、ワクチン接種の推進も重症化を防ぐ有効な手段です。
    こうした取り組みを継続的に行い、科学的根拠に基づいた対策を現場に根づかせることが、利用者の安心と施設の信頼を守ることにつながります。

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